米国株 $3,000 を AI とテクニカルルールで動かす — Chillarin Trading Lab を始めた
AI と伝統的なテクニカルルールの 2 戦略を、少額の実際の資金で並走させて比べてみる個人実験
はじめに
2026 年 6 月 1 日、Chillarin Trading Lab(以下 CTL)で米国株の運用を、実際の資金で始めました。
「AI に任せる」戦略と「機械的なルールで売買する」戦略を、本物のお金で同時に動かして、どちらが報われるのかを観察する。これがやることのすべてです。比べる相手はもう 1 つあって、それは「インデックスを初日に買って放置した場合のリターン」です。これは実際に動かす戦略ではなく、勝ち負けを測るためのものさし(基準線)として置いています。
元本は合計 $3,000。少額です。失っても生活に影響しない範囲に意図的に抑えています。これは投資助言ではなく、自分の少額の資金を使った観察記録です。負けたら負けたで、なぜ負けたのかを残していきます。
この記事は「始めた」という報告と、初日に持った銘柄の記録です。仕組みの詳細や売買ロジックの話には深入りせず、関連記事への入口を置く程度にとどめます。
何を始めたのか
CTL で並走させているのは、性格の異なる 2 つの戦略です。それに加えて、成績を測るための基準線が 1 本あります。
- Fund A(AI 判断) — 買う銘柄も売るタイミングも AI が決めます。値動きの勢い(モメンタム)が上位の 2 銘柄に集中して投資し、長めの移動平均線(EMA50 と EMA200)がデッドクロスしたときにだけ売る、中長期保有型です。元手は実際の資金 $1,500。
- Fund B(伝統的なテクニカルルール) — AI は一切使いません。定番のテクニカル指標から作った 10 個のシグナルのうち、異なるカテゴリのものが 2 つ同時に成立したら買います。売りはオニール流で、買値から −8% で損切り、+25% で利確という、おおよそ 3:1 のルールです。元手は実際の資金 $1,500。
- 基準線(インデックス放置) — VTI / SPY を初日に買って何もせず放置したらどうなるか。これは計算上のものさしであって、3 つ目の戦略ではありません。
念のため強調しておきます。実際にお金が動いているのは Fund A と Fund B の 2 つだけです。インデックス放置は「もしこうしていたら」を測るための線で、実際の資金は入れていません。
AI に銘柄選びを任せたほうが報われるのか、それとも人間が決めた機械的なルールのほうが堅いのか。あるいは、結局インデックスを放置するのが一番なのか。よく語られるこの 3 つの立場を、机上の議論ではなく自分の実際のお金で確かめてみたい。それがこの実験の出発点です。
初回の保有銘柄
2026 年 6 月 1 日、最初のポジションを持ちました。実際に約定した内容は以下のとおりです。
| Fund | 銘柄 | 株数 | 約定単価 | 概算評価額 | 残現金(概算) |
|---|---|---|---|---|---|
| A(AI) | GOOGL | 2 | $374.54 | 約 $749 | — |
| A(AI) | WMT | 6 | $115.57 | 約 $693 | 約 $53 |
| B(ルール) | MSFT | 1 | $463.85 | 約 $464 | 約 $1,034 |
Fund A は割り当てた $1,500 を 2 銘柄にほぼフル投入し、株式の評価額は合計でおよそ $1,496、残った現金は約 $53 になりました。狙いどおり「上位 2 銘柄に集中」という形で初日のポジションが組まれています。
Fund B は MSFT を 1 株だけ買って、残現金が約 $1,034 残っています。これは「異なるカテゴリのシグナルが同時に成立した銘柄を、1 銘柄あたり 1 株ずつ買う」というルールの結果です。候補には QQQ もあったのですが、1 株が $700 を超えていて 1 株あたりの上限を超えてしまうため、初日は見送りました。Fund B が現金を多めに抱えているのは、出番(シグナルの成立)を待っている状態だと考えてください。
ここで 1 つだけ線を引いておきます。「なぜ GOOGL と WMT だったのか」「なぜ MSFT が買い条件を満たしたのか」という選定ロジックは、この記事では掘り下げません。それぞれの戦略がどんな条件で買い、どんな条件で売るのかは、売買シグナル解説の記事 で条件式まで整理しています。この記事では「初日にこの銘柄を持った」という事実を記録するところで止めておきます。
なぜこの実験をするのか
私が知りたいのは、シンプルな問いです。米国株で、AI・機械的なルール・インデックス放置のうち、どれが報われるのか。
3 つとも、もっともらしい理屈はあります。AI なら人間が気づかない勢いを拾えるかもしれない。機械的なルールなら感情に流されず一貫して売買できる。インデックス放置なら手数料も判断ミスも最小で、長期的には市場全体の成長に乗れる。どれも筋は通っていて、だからこそ口で議論しても決着がつきません。やってみるしかない、と考えました。
バックテストで見えた性格の違い
実際の資金を入れる前に、過去およそ 5 年分のデータで机上検証(バックテスト)はしています。そこで見えたのは、勝ち負けそのものよりも戦略ごとの性格の違いでした。
ざっくり言うと、株価が伸びていく強気相場では、インデックス放置や AI の中長期保有が、機械的なルールに大きく差をつけました。一方で市場が下げた局面では、損切りルールを持つ機械的な戦略のほうが傷を浅く抑えられる、という結果が出ています。
数字を 1 つだけ添えておくと、5 年通算では AI 中長期保有やインデックス等分放置がプラス 170〜175% 前後だったのに対し、機械的なルールはプラス 50〜62% 程度でした。ただし下落した 2022 年だけを切り出すと、機械的なルールがプラス 3.7%、SPY 放置がマイナス 8.9% と、優劣がきれいに入れ替わります。
ここは慎重に読んでください。これらはすべて過去データの上での計算であって、将来を保証するものではありません。しかもこの検証期間は、歴史的に見て強気相場を多く含んでいます。ずっと右肩上がりの相場では、売らずに持ち続けるほど値上がりの恩恵をそのまま受け取れます。買い持ちが有利に出るのは、強気相場という前提があってこその結果です。
この実験で本当に確かめたいのは、AI・機械的なルール・インデックス放置のうち、実際のお金でどれが報われるのかという一点です。机上の数字が実際の運用でも再現するのか、それとも崩れるのかは、その観察の過程で見えてくるものだと考えています。数値の出どころや読み方をもう少し詳しく知りたい方は、売買シグナル解説の記事 のほうで整理しています。
失敗も記録する
この実験で 1 つ決めていることがあります。うまくいかなかったときも、そのまま記録するということです。
実際のお金を動かした記録は、勝った話だけを並べると途端に嘘くさくなります。AI が選んだ銘柄が外れたら、なぜ外れたのかを残す。機械的なルールが損切りに引っかかり続けたら、その回数も残す。インデックス放置に両方が負けたら、それも正直に書きます。個人の実験記録として誠実でいられるかどうかは、負けをどう書くかにかかっていると考えています。
どう動かしているか
仕組みの話はこの記事の主役ではないので、軽く触れる程度にします。
注文の執行には moomoo を使っています。保有している銘柄や日々の評価額は TimescaleDB に記録していて、後から「いつ・何を・いくらで売買したか」を全部たどれるようにしてあります。Fund A の AI 判断や、毎日どういうサイクルでシグナルを評価して注文を出すのか、といった全体像は、この記事では立ち入りません。
システム全体の仕組み(どうやって執行し、どう記録し、AI がどこで判断しているのか)は、Chillarin Trading Lab の仕組み — AI 自動売買の全体像 で詳しく取り上げています。
これからの記録について
CTL は始まったばかりです。これから毎週、Fund A と Fund B の成績、そして基準線であるインデックス放置との差を記録していくつもりです。AI がどんな判断をしたのか、機械的なルールがいつ損切り・利確に動いたのかも、あわせて残していきます。
関連する記事への入口を、最後にまとめておきます。
- 売買のロジックを知りたい方 — Fund A と Fund B がどんな条件で買い、どんな条件で売るのか、10 個のシグナルの中身まで踏み込んだ Chillarin Trading Lab 売買シグナル解説 をどうぞ。今回の GOOGL / WMT / MSFT がなぜ買われたのかも、こちらの考え方をたどれば見えてきます。
- システムの仕組みを知りたい方 — 執行・記録・AI 判断・日次サイクルといった全体像は、Chillarin Trading Lab の仕組み — AI 自動売買の全体像 にまとめています。
少額の資金で、AI と機械的なルールとインデックス放置を並べて走らせる。どれが報われるのかは、正直やってみないと分かりません。分からないからこそ、本物のお金で確かめてみることにしました。結果は、勝ちも負けも、これから淡々と記録していきます。
注記
- この記事は投資助言ではありません。あくまで個人が自分の少額資金で行っている実験の記録です。
- 元本は Fund A・Fund B あわせて $3,000($1,500 × 2)。失っても生活に影響しない範囲に意図的に抑えています。
- 記事内のバックテストの数値は、過去データの上での机上検証であり、将来のリターンを保証するものではありません。
- バックテストの検証期間(過去およそ 5 年)は、歴史的に見て強気相場を多く含みます。結果はこの前提に依存しています。
- 売買の最終的な判断と結果の責任は、すべて運用している私自身(ちらりんの飼い主)にあります。読まれる方ご自身の投資判断は、ご自身の責任で行ってください。
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